【読書・一般向け技術書】ブロックチェーン入門(ベスト新書) 森川 夢佑斗 (著)
米アクセンチュアによれば、分散型台帳技術(distibuted ledgers)はビジネス成功に欠かせない新たなテクノロジートレンド「DARQ」の一角とされている。
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/technology/technology-trends-2019
今回ご紹介するのは、暗号通貨の基礎として知られるブロックチェーン=分散型台帳技術の入門的内容を扱った一冊だ。
序章では、取引記録の連鎖=ブロックチェーンが、中央管理者を必要とせずに記録の改ざんが困難な取引を実現するからくりが明確に説明されている。暗号通貨の文脈でしばしば目にする「マイニング」についての解説も明快だ。
また、ブロックチェーンが実現する堅牢な取引に加えて仲介者が不在の自動取引を実現するスマートコントラクトおよびスマートオラクルにより、産業のパラダイムシフトが実現する可能性についても述べられている。
暗号通貨といえばここ数年は投機の対象としてもてはやされることが多かったが、バブルも弾けた感のある今日この頃、ひところの熱気は失われつつあるのかもしれない。だが本書では短期的な盛衰にとらわれず、長期的に見た成長産業としてのブロックチェーンの魅力が存分に語られている。
我々は技術を短期的には過大評価し、長期的には過小評価するという戒めの言葉を思い浮かべつつ、今後もブロックチェーン周辺の技術には多いに注目していきたい。
ブロックチェーンにより後押しされた分散型台帳技術は、「通貨」や「信用」、「賃金」、ひいては「国家」といった、人類の歴史の中で緩やかに形成されてきた概念を短期間でアップデートする可能性を秘めている。
生まれや育ちではなく、主義や信条によりコミュニティを選ぶ自由をもたらすかもしれない重要な技術であることがわかる。