イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

海外文学

【読書・海外文学】絶望 (光文社古典新訳文庫), ウラジーミル・ナボコフ, 貝澤哉

こんなにうれしいのは、だれかをペテンにかけた場合なんだな。たったいまある人物をみごとにペテンにかけたところだが、だれかって? 読者よ、鏡をよくよく覗いてみるがいいさ、なにせおまえさんは鏡に目がないときてるんだからな。 ビジネスマンのゲルマン…

【読書・海外文学】あしながおじさん (光文社古典新訳文庫) ウェブスター (著)

本作は、孤児のジェルーシャ(ジュディ)が、謎の紳士ジョン・スミスの経済的援助を受けて女子大に進学し、才能を開花させてゆく物語だ。 本文はジュディによるスミス氏(あしながおじさん)への「月に一度のお礼状」の文面という形式をとる。 孤児院で最年…

【読書・海外文学】寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫) ムージル (著), 丘沢 静也 (翻訳)

舞台は良家の子息の集まる寄宿学校。 寄宿生テルレスは、 宮廷顧問官の息子。空想しがちで、空き時間には授業で扱った「無限」や「虚数」といった数学上の概念を少年なりに真面目に検討してしまい、決まって最後にはメモリがパンクしてしまうような少年だ。 …

【読書・海外文学】天使も踏むを恐れるところ (白水Uブックス―海外小説の誘惑) E.M. フォースター (著), 中野 康司 (翻訳)

天使も足を踏み入れるのを恐れるところに、愚か者は飛び込む───。 本書のタイトルは、アレクサンダー・ポープによる有名な格言が元になっているそうだ。読み終わって始めて、この格言の意味がわかった。 裕福で世間体を重んじるイギリス中産階級の一家と、経…

【読書・海外文学】死の家の記録 (光文社古典新訳文庫) ドストエフスキー (著)

「地下室の手記」以来の惹きつけられる読書体験。美しい悪夢を見て、ぐったりと疲れて目覚めたときのような読後感に浸れる。監獄の灰色の日常の中で異彩を放つ降誕祭の場面、特に囚人たちによる演劇のシーンと、読んでいるこちらまで少し後ろ髪を引かれるよ…

【読書・海外文学】イー・イー・イー タオ・リン(著)

「優雅な読書が最高の復讐である」に載っていた訳者の山崎まどかさんの解説を読んで興味を持ったので読んでみる。 身の回りの誰かを思い出す、不毛さと鬱屈した感情の洪水だった。登場する「イルカ」はなんとなくWindows XPの例のイルカ(人によっては見てい…

【読書・海外文学】城 (新潮文庫) フランツ・カフカ (著)

永遠によそ者を拒み続ける「城」の見下ろす村で、主人公Kが翻弄され、爪弾きにされていく物語である。不条理文学というといかにも堅苦しく聞こえるが、自分になんら落ち度がないはずであるのに、周囲の人間からの圧力によって、自分の意志を捻じ曲げざるを得…