イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

国内文学

【読書・国内文学】消滅世界 (河出文庫) 村田沙耶香 (著)

「婚姻関係」と「恋愛関係」が完全に分離した世界。 そんな世界に暮らす女性「雨音」が主人公の物語である。 作中世界では、戦時中の若年男性人口の減少を受けて開発された技術により、生身の人間同士の「交尾」ではなく、人工授精による出産がマジョリティ…

【読書・国内文学】顔のない裸体たち (新潮文庫) 平野啓一郎 (著)

あまり物事に思い悩まず、周囲に流されるように人生を送ってきた中学教師の女性「ミッキー」と、鬱屈した感情を抱える典型的なダメ男「ミッチー」の間の、ねじれた性的主従関係を描いた物語。 誰の記憶にも残らなかったであろう女性が、センセーショナルな事…

【読書・国内文学】カーブの向う・ユープケッチャ (新潮文庫) 安部公房 (著)

「砂の女」の原型となった「チチンデラ ヤパナ」や、方舟さくら丸」のプロローグ的短編「ユープケッチャ」などを含む短編集。 印象的だったのは、結婚相談で出会った男が、太古の地球を再現した閉鎖空間内で子どもを養っている…という「子供部屋」と、娘との…

【読書・国内文学】女のいない男たち (文春文庫 む 5-14) 村上 春樹 (著)

いろんな事情で女性に去られてしまった / 去られようとしている男たちを題材とした短編集。 風変わりな友人"木樽"とその恋人の関係を通じて、青春の孤独のほろ苦さを感じる「イエスタデイ」、妻に去られ始めたバーに訪れる、捉えどころのない神秘的な"カミタ…

命 (新潮文庫) 柳 美里 (著)

消えゆく命と生まれつつある命の間でもがく作家・柳美里の葛藤が綴られた一冊。 特に印象的だったのは、かつての恋人であり、精神の支えでもある東由多加氏による、痛々しいまでのサポートだ。 命 (新潮文庫) 作者: 柳美里 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: …

蠕動で渉れ、汚泥の川を (角川文庫) 西村 賢太 (著)

まだ藤澤清造作品も秋恵の存在も知らない頃の、痛々しくも切ない、貫多・青春編。 17歳にして、小心者でありながら根っからのスタイリストな人格は完成済み(?)。 貫多ものの作品では毎度のことながら、貫多と周囲の人々の、危うい感情のキャッチボール…

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫) 村上春樹 (著)

ノルウェイの森の雰囲気を感じる「蛍」(あの「突撃隊」風の、同室の青年には懐かしささえ感じてしまった)、村上作品には猫より多く出ているんじゃないかと感じる『僕だけが正体を知っているサイコパス』的登場人物が印象的な「納屋を焼く」、ファンタジッ…