2019-02-06から1日間の記事一覧
天使も足を踏み入れるのを恐れるところに、愚か者は飛び込む───。 本書のタイトルは、アレクサンダー・ポープによる有名な格言が元になっているそうだ。読み終わって始めて、この格言の意味がわかった。 裕福で世間体を重んじるイギリス中産階級の一家と、経…
「地下室の手記」以来の惹きつけられる読書体験。美しい悪夢を見て、ぐったりと疲れて目覚めたときのような読後感に浸れる。監獄の灰色の日常の中で異彩を放つ降誕祭の場面、特に囚人たちによる演劇のシーンと、読んでいるこちらまで少し後ろ髪を引かれるよ…
「優雅な読書が最高の復讐である」に載っていた訳者の山崎まどかさんの解説を読んで興味を持ったので読んでみる。 身の回りの誰かを思い出す、不毛さと鬱屈した感情の洪水だった。登場する「イルカ」はなんとなくWindows XPの例のイルカ(人によっては見てい…
永遠によそ者を拒み続ける「城」の見下ろす村で、主人公Kが翻弄され、爪弾きにされていく物語である。不条理文学というといかにも堅苦しく聞こえるが、自分になんら落ち度がないはずであるのに、周囲の人間からの圧力によって、自分の意志を捻じ曲げざるを得…
アーレントの生涯を通じて、その思索を辿る一冊。 民主主義国家が全体主義に陥る過程は、決して一度きりの悲劇ではなく、戦後の世界でも起こりうる問題であること、 個人を結びつける世界がなくなり、その関係性が「砂漠化」することが、全体主義による人々…
書記イブン・ジュバイルのメッカ巡礼記。巡礼の最中目にしたものの記述で面白かったのは、エジプトの「ピラミッド」と「老婆の城壁」に関する箇所。 ピラミッドについては、その正体を「コーランに登場する古代のアラブの部族長とその子孫の墓」と考える者が…
「砂の女」の原型となった「チチンデラ ヤパナ」や、方舟さくら丸」のプロローグ的短編「ユープケッチャ」などを含む短編集。 印象的だったのは、結婚相談で出会った男が、太古の地球を再現した閉鎖空間内で子どもを養っている…という「子供部屋」と、娘との…
気鋭の心理学教授が「暴力」の側面から概観した人類史を扱う一冊。著者の主張は大きく分けて以下の二点。 ・その歴史を通じて、人類全体であらゆる種類の暴力(個人間も、集団間も)は減少してきている。 ・また、テロや紛争による被害の実態は、現代の悲観…
著者には、もっと超然として必然的な選択の結果としての人生を送っている印象を持っていた。 だがこの本の中で語られた内容によると、著者はこれまで度々行く手に困難が予想される選択肢を選び取っているばかりか、作家人生のはじまりはまったくの僥倖だと考…
のちの昭和軽薄体の片鱗が見える表題作。 東ケト会シリーズファンにはお馴染みの“活字中毒患者”目黒さんが、武術の使い手であり(ここからもう面白い)、口論の末に著者をのしてしまうのが冒頭。その報復に、活字中毒の治療と称して著者の叔父貴の家の味噌蔵…
いろんな事情で女性に去られてしまった / 去られようとしている男たちを題材とした短編集。 風変わりな友人"木樽"とその恋人の関係を通じて、青春の孤独のほろ苦さを感じる「イエスタデイ」、妻に去られ始めたバーに訪れる、捉えどころのない神秘的な"カミタ…
社会人の基礎知識と言われるPDCAサイクルを効率的に回し、課題解決と目標達成に至る方法を述べた本。流し読みに近いが、各段階の方法論が非常に具体的で、再読したいと感じた。 また、この手の本は方法論の実践については、ケースバイケースを考えずに役に立…
時間内に仕事が終わらない理由を指摘し、改善策として2割の時間に全力疾走で8割の仕事を終わらせる(ロケットスタート)+ 8割の時間で流しつつ質を高める(スラック=余裕、たるみ)という方法を提案している。 本書では「期限を守ること」を最重要に考えてお…
amazon prime オリジナルドラマが面白かったので、原作を読んでみた。 舞台は第二次大戦で枢軸国側が勝利した世界。日独により分割されたかつての合衆国で、日本、ドイツ、イタリア、アメリカ、そしてユダヤにルーツを持つ人々の運命が交差する。 この並行世…
消えゆく命と生まれつつある命の間でもがく作家・柳美里の葛藤が綴られた一冊。 特に印象的だったのは、かつての恋人であり、精神の支えでもある東由多加氏による、痛々しいまでのサポートだ。 命 (新潮文庫) 作者: 柳美里 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: …
推理小説というジャンルを確立したとも言える古典作品で、「シャーロック・ホームズ」シリーズの第一作にあたるようだ。 ホームズの言行録は半分程度で、残り半分は解決編にあたる第二部に当てられている。第二部は一見すると冒険活劇のようなテイストで急展…