イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫) アーサー・コナン・ドイル (著), 深町 眞理子 (翻訳)

推理小説というジャンルを確立したとも言える古典作品で、「シャーロック・ホームズ」シリーズの第一作にあたるようだ。

ホームズの言行録は半分程度で、残り半分は解決編にあたる第二部に当てられている。第二部は一見すると冒険活劇のようなテイストで急展開に驚かされるが、やがて物語は犯人が凶行に及ぶに至った背景に収束しており、単なる怪奇殺人に止まらない犯人の心情に迫る緻密な背景描写がなされている。

ちなみに表題はホームズ曰く美術用語からの転用とのこと。

「人生という無色の綛(かせ)糸の中に殺人という緋色の糸が紛れ込んでいる...」のくだりを読んで、なんとなく一昔前のテレビドラマ「古畑任三郎」のオープニング映像を思い出した方も多いのではないだろうか。

解説は高山宏という豪華さも嬉しい。なお、解説の本文によると高山宏はホームズの登場シーンを見て、「科捜研の女」を思い浮かべたらしい...。

 

緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫)

緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫)