イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

箸墓古墳(奈良県桜井市)①

筆者「S」が古墳に興味を持つようになったきっかけは、高校時代の日本史資料集に載っていた一枚の航空写真だった。

明らかに他の前方後円墳とは異なり、いくらかひしゃげたような形状をしたその古墳。古墳=同じ寸法の鍵穴型という図式が頭にあった筆者には、その形状の「いびつさ」は、この古墳の個性として強く印象に残った。加えてその被葬者の有力候補は、あろうことか女王卑弥呼であるという記述に目を奪われた。

半ば神格化された人物が地図上のある一点に埋葬され、聖性を保っているというこの不思議さに、やられた。いわば歴史と神話の接点としての古墳は、高校生当時の自分の空想(妄想?)を刺激するには十分だった。

 

今年の春に、宿願叶って周辺を訪れる機会があったので、ここにその一部始終を記したい。

 

桜井駅に降り立つ。纒向遺跡の概要を記したパネルがお出迎え。纒向遺跡は古代の一大集落であり、邪馬台国の有力な候補だったそうだ。

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空が広い。

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住宅街を進んでいくと、前触れもなく「お山」が見えてくる。

この住宅街がなければ、周辺はほとんど何もない平地ではないだろうか。当時の人々にとって、墳丘から受けるインパクトは今以上だったのだろう。

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穏やかな春の日の昼下がり。

 

ワンダバダバ、ワンダバダバ、ワンダバダバ♪ 

思わず「MATのテーマ」が口をつくほどに、筆者のテンションはいやが応にも上昇する。

 

だいぶ近づいてきた。

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まるで太古の昔から止まることなく成長を続けてきた鯨のような、堂々たる外観。自分の矮小さと、矮小な自分が死んだあとにも残り続けるであろう対象に対して抱く、わずかな憧れ。思わずその場に立ちすくみ、直立不動のまま眺めてしまう。

 

昼は人が作り、夜は神が作った墓。

 

日本書紀に記された、箸墓に関する謎めいた一節である。

 

今回はここまで。