イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568) フィリップ・K・ディック (著)

amazon prime オリジナルドラマが面白かったので、原作を読んでみた。

舞台は第二次大戦で枢軸国側が勝利した世界。日独により分割されたかつての合衆国で、日本、ドイツ、イタリア、アメリカ、そしてユダヤにルーツを持つ人々の運命が交差する。

この並行世界において、連合国側が勝利した世界を描いた本が出回るという二重の構造が描かれている。

印象的だったのは日本人夫妻と白人古物商・チルダンの晩餐のシーン。慇懃に振る舞おうと努力しつつも人種の違いから生じるルサンチマンがにじみ出ている。映像作品でも同様のシーンがあり、非常に印象的だった。

この世界では、大きな選択に迫られたときは、社会的地位の高い者も低い者も「易経」にすがるのだが、神秘的を通り越してややコミカルでさえある。 

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)