イタズラ電話

海外・国内文学、人文、自然科学などのジャンルを中心とした読書の感想を綴ります。光文社古典新訳文庫、平凡社ライブラリー、講談社文庫、ちくま学芸文庫などが多めです。時たま、古墳散策とタイピングについての記事も。

【読書・国内文学】顔のない裸体たち (新潮文庫) 平野啓一郎 (著)

あまり物事に思い悩まず、周囲に流されるように人生を送ってきた中学教師の女性「ミッキー」と、鬱屈した感情を抱える典型的なダメ男「ミッチー」の間の、ねじれた性的主従関係を描いた物語。

誰の記憶にも残らなかったであろう女性が、センセーショナルな事件に巻き込まれるまでを描く。

「ミッキー」は、クラスで話題に上がるようなこともない、自分自身よりも「自分の写真に似ている」ような女性。なんとなく、川上未映子の作品(「愛の夢とか」のどれか)に出てきた、帰宅後に何をする訳でもなく充電器に収まるようにひっそりと時間を過ごす女性を彷彿とさせる。

今作では、他人の人生の書き割りとして作られたような女性が、どのようにして一大センセーショナルをもたらす事件の中心人物となるのかを描いている。 

顔のない裸体たち (新潮文庫)

顔のない裸体たち (新潮文庫)