【読書・海外文学】天使も踏むを恐れるところ (白水Uブックス―海外小説の誘惑) E.M. フォースター (著), 中野 康司 (翻訳)
天使も足を踏み入れるのを恐れるところに、愚か者は飛び込む───。
本書のタイトルは、アレクサンダー・ポープによる有名な格言が元になっているそうだ。読み終わって始めて、この格言の意味がわかった。
裕福で世間体を重んじるイギリス中産階級の一家と、経済的には貧しいが自由奔放な生活を送るイタリアの片田舎の若者という対照的な人びとは、一人の“愚か者”の行動が元で、ぶつかり合うことになる。
特に注目して貰いたいのは、ヘリトン家の近所に住まう慈善事業に生涯を捧げる女性、キャロライン・アボット。
序盤ではごく退屈な女性でしかなかった彼女の印象は、イタリア訪問をきっかけに大きく変わり始める。
そして、喜劇的要素は影を潜め、終盤では息も詰まるような衝撃の展開が繰り広げられる。その場面を挟むような、フィリップとアボットの独白は特に印象深く、ほぼ全文を写し取ってしまった。
天使も踏むを恐れるところ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
- 作者: E.M.フォースター,E.M. Forster,中野康司
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1996/08/01
- メディア: 新書
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