【読書・海外文学】城 (新潮文庫) フランツ・カフカ (著)
永遠によそ者を拒み続ける「城」の見下ろす村で、主人公Kが翻弄され、爪弾きにされていく物語である。不条理文学というといかにも堅苦しく聞こえるが、自分になんら落ち度がないはずであるのに、周囲の人間からの圧力によって、自分の意志を捻じ曲げざるを得ない状況というのは、誰の人生にも起こりうることだろう。カフカの作品を読むことで、気づかされることは多い。
本作で特に印象的だったのは、終盤のペーピーの長い独白だ。 Kとフリーダの奇妙な同棲は、人格を認め合うのではなく、単にお互いを近づきがたい城へのコネクション(=フリーダ)と、自らを汚すに相応しい、最も下等な相手(=K)と見なすことで取り持たれていたという指摘が、鳥肌ものだった。
前田敬作さんのあとがきも明快だった。自己疎外される現代社会の不条理を看破したのは、永遠の異邦人とされたユダヤ系のカフカとマルクスである。
- 作者: フランツ・カフカ,Franz Kafka,前田敬作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/04
- メディア: 文庫
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